モノを生み出す人々と現場

牡蛎加工品製造

野﨑 末廣すえひろ さん ・ 厚子 さん

野﨑 末廣・厚子
写真:瀬戸内海に牡蛎筏が並ぶ風景
写真:牡蛎を海から引き上げる光景

全国に知られる「曙牡蠣」を育む
瀬戸内市邑久町虫明の海域で、
明治時代の創業から7代続く漁家。

国内有数のカキ生産量を誇る岡山県。その約4割を占めるのが、岡山県の南東部に位置する瀬戸内市邑久町虫明地区です。
カキのエサとなる植物プランクトンが多く、カキ筏を風波から守る大小の島影にも恵まれた、邑久町虫明の海。そこで育てられる、ふっくらと大粒で濃厚な味わいのカキは、平清盛の父・忠盛が、この地の風景の美しさを詠んだ歌にちなんで「曙牡蠣」の名で全国に知られています。

写真:野﨑さん一家

その邑久町虫明地区で『牡蠣の家しおかぜ』を営む野﨑家は、明治初期に定置網漁業で創業して以来、7代続く漁家です。
カキの養殖を手がけ始めたのは、4代目。この地でカキの養殖が本格化し始めた昭和26(1951)年頃だといいます。6代目にあたる末廣さんと妻の厚子さんは、平成18(2006)年から海水用の紫外線殺菌装置やカキ殻の清掃機械の導入、カキ作業場の環境整備などを行ない、「より品質の高いカキの生産」に力を注いできました。

写真:牡蠣の家しおかぜ加工場

原点は、郷土料理「牡蠣の佃煮」。
商品としてのクオリティを追求。

野﨑夫妻は、平成22(2010)年に「しおかぜ加工場」を新設し、飲食店営業と惣菜製造業の営業許可を取得しました。そして、野﨑家に代々伝わる「牡蠣の佃煮」やカキフライなどを作り、産直市場で販売するようになります。その売れ行きから需要の高さを実感した厚子さんは、次第に「賞味期限が長い商品を作りたい」と考えるように。

写真:牡蠣のオリーブオイル漬け

そんな時、岡山の有名シェフが提案してくれたのが、カキのオリーブオイル浸けでした。
「常温で日持ちさせるため、どうやってカキの水分を抜くかが難題でした」。
もともと探究心の強い厚子さんは、他県の大学などにも積極的に問合せ、試行錯誤を重ねて、クオリティの高い加工品を追求しました。

2012年には六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画の認定を受けたのを機に、『牡蠣の家しおかぜ』を設立。地元の市や商工会などの協力を得て、牡蠣の燻製オリーブオイル漬け「海燻(かいくん)」を完成させました。「瀬戸内市の土産にもなる品」を目指す厚子さんは、地産食材を取り入れた商品作りに今も余念がありません。

写真:加工途中の牡蛎
写真:殻を向いた牡蛎
写真:牡蛎をオイルで煮る
写真:瓶に詰めた牡蛎にオイルを注ぐ
写真:厚子さんと加工場で働く皆さん
写真:末廣さんと息子さん

「息子の代が希望を持てる漁業に」。
日々全国を飛び回り、自慢の品を伝える。

新たに導入したスチームコンベクションオーブンや真空包装機などの近代設備を用い、不要な添加物は加えずに、ひとつひとつ丹念に人の手で作る加工品は、次第に注目を集めるように。やがて2014年、全国880品がエントリーした農林水産省の「第2回地場もん国民大賞」で、「海餐の宴 牡蠣のアヒージョ」が最高位の金賞に輝きました。

厚子さんが、そんな加工品の開発・製造の第一歩を踏み出したのは、「虫明においしいカキや魚があることを知ってほしい」という思いから。そして、「息子の代が希望を持って漁業を行うことができる経営のあり方」を求めた結果だと言います。さらに「虫明地域全体の活性化につながれば」とも願う厚子さん。「曙牡蠣」のおいしさを伝えるため、東へ西へと、全国を飛び回っています。

写真:野﨑 末廣さん
写真:野﨑 厚子さん

Profile

牡蛎加工品製造
「牡蠣の家しおかぜ」 野﨑 末廣(のざき すえひろ)・厚子(あつこ)

夏は小型定置網漁、冬はカキの養殖を行う。漁師歴54年の末廣さんは、全国漁港漁場協会の「海の名人」に認定されている。会社勤めを経て漁師の妻となった厚子さんは、現在、加工品の企画・開発・製造・販売までを担う。

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