モノを生み出す人々と現場

桃農家

三谷みたに 幸子ゆきこ さん

三谷 幸子
写真:白桃
写真:白桃
写真:三谷 幸子 さん

岡山が誇る珠玉の逸品「白桃」。
父の跡を継ぎ「桃農家」として歩み始める。

岡山を代表する特産品といえば「桃」。なかでも「白桃」は、ほんのり紅がかった美しい白肌、きめ細やかでみずみずしい果肉、一度食べると忘れられない甘みと香りで、人々の心を魅了してきました。そんな桃作りに、真摯に取り組む農家の一人が三谷幸子さんです。

岡山の桃の名産地・倉敷市玉島で、父・強さんの跡を継ぎ、桃農家として一歩を踏み出したのが、今から15年前のこと。もともと別の仕事に就いていた幸子さんが、農業のおもしろさに気付いたのは、稲の田んぼに肥料をまく手伝いをしていたとき。
「均等にまくつもりが、最後の2~3列足らなくなってしまったんです。そのときはごまかせたのですが、しばらくして父にばれました。稲が大きくなって、葉の色が全然違ったためです。それを目の当たりにしたとき『農作物はなんて正直なんだろう!』と感動しました」。
その体験をきっかけに、農業の魅力に開眼。その後、父の桃農園を継ぎ、本格的に始めた桃の栽培も「難しいけれど楽しい」と、その奥深さにどんどん引き込まれていきました。

写真:桃の木と三谷さん

「農薬を使わない方法」への挑戦。
全滅を経験し、試行錯誤を繰り返し、
有機栽培方法を確立。

もともと父・強さんの稲作の手伝いをしていたとはいえ、知識も経験もほとんどない状態から、一念発起して始めた桃作り。そのうえ、果物の中でも、とりわけ手間がかかる桃を、「有機栽培」で育てることを決断。「『農薬を使わない方法』に挑戦した最初の年の収穫は『0(ゼロ)』。今でも全滅になることもありますよ」。農薬を使わない栽培方法を模索する幸子さんの挑戦の日々は続きました。

写真:桃の葉と手
写真:作業する三谷さん
写真:桃畑

最初は、農薬の代わりに、ベンガラにチタンの粉をまぜて使ったり、桃の樹液を使ったりと、試行錯誤を繰り返す日々。
「試せば試すほど、木がはれるなど、桃の木から『嫌がるサイン』が出ましたね」。
そんな自然の声を丁寧に聞きながら、あらゆる方法を追求した結果、「何もしない」という栽培方法にたどり着きます。風土が育む「自然の力」で、桃本来の甘みを最大限に引きだす。とりわけ栽培がデリケートな桃ゆえ、成熟させるには「観察がすべて」だといいます。

一番近くで幸子さんの桃作りを見てきた夫・英明さんも、
「今年はジョロウグモが少ない、葉が厚い、色が薄いなど、どんな小さな自然の変化も肌で感じ取ることができるのが、幸子のすごいところ」
と感服しきり。時間を見つけては畑に出向き、桃のために最善を尽くしてきた彼女の実直な姿勢が実を結び、平成19(2007)年、全国でも稀な桃の有機JAS事業者に認定されました。「有機栽培で作られた桃は、繊維質がきめ細やかで上品な舌触りが魅力なうえ、害虫を寄せ付けないよう、他の桃に比べてけばだちがあるのも特徴」とのこと。

写真:作業する三谷さん
写真:木になる桃
写真:収穫した桃
写真:作業する三谷さん
写真:桃畑の遠景
写真:笑顔で桃を見つめる三谷さん

ひとえにお客様に喜んでもらうために。
手間を惜しまず愛情を注ぎ、桃と向き合う。

現在、幸子さんは、「清水白桃」「日川白鳳」「加納岩白桃」「白鳳」「おかやま夢白桃」「黄金桃」「恵白」の7品種を、約2haの畑で栽培。そのうち「清水白桃」「加納岩白桃」「白鳳」の3品種を有機栽培しています。
一番おいしい状態でお客様に届けるために、樹でギリギリまで熟し収穫するのも、こだわりのひとつ。桃の収穫時期になると、睡眠時間が2~3時間になることもあるのだそうです。
「桃の栽培は、何年やっていても難しい。毎年状況が違うため、ここ数年では収穫が半分以下になる年もありました。でも、自分にできる策があるなら全部やりたいし、できる限りの努力を尽くす姿勢は変わりません」。

たったひと箱の収穫量でも、「おいしい」と言ってくれるお客様のために桃を作る。そんな強い気持ちと高い志を持ち、桃栽培に挑み続ける幸子さん。「農作物は本当に素直。自分が精一杯尽くせば、きちんと応えてくれます」。自然と向き合い、惜しみない手間と愛情を注ぐからこそ、記憶に残るおいしい桃が生まれるのです。

写真:三谷 幸子 さん

Profile

桃農家
エコファームMITANI 三谷 幸子(みたにゆきこ)

父の跡を継ぎ、27歳の時に桃農家に転身。以来、全国でも珍しい有機JAS認定の桃の栽培に励む。

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